2010年5月7日(金)開院予定 ケーズHAT神戸メディカルモール
最近、アトピー性皮膚炎治療における外用剤の使い方に関して、プロアクティブ療法という方法が注目されています。
プロアクティブ療法とは、皮膚炎が軽快した後もステロイド外用薬などの使用を中止せず、しばらくの間外用を継続する方法です。それにより、皮膚炎やかゆみの改善状態が長期間維持することができ、再発、再燃(ぶり返し)の頻度や重症化が減ることが期待できるため、最近では取り入れている医療機関が急速に増えています。この治療法の根拠として、外用薬の使用により皮疹が軽快して見た目は治ったように見えても、目に見えないレベルで炎症細胞が残存しており、軽度の炎症が持続しているので、何らかの刺激で容易に皮疹が悪化することが様々な研究データにより証明されています。
プロアクティブ療法の具体的な方法ですが、これまでのように、「ステロイド外用薬は1日に最低2回はきっちり塗って、良くなったらすぐやめて保湿薬などのスキンケアのみを続けましょう」という方法ではなく、皮疹が軽快した後は、ステロイド外用の回数を徐々に減らしていき、最終的には週に2~3回程度の外用を継続するという方法が一般的です。
皮膚炎が良くなっているにもかかわらず、正常(に見える)皮膚にステロイド外用薬を塗り続けることに不安を抱くのはもちろんで、そのような心理的な抵抗感がこれまでこの治療法が広く行われてこなかった最大の理由です。また、1日○回で週に○回で○週間のような複雑な方法だと受け入れにくいことがあるので、当院では、「良くなった後も1週間だけそのまま続けて塗ってください。」という方法から始めています。それにより、ほぼ完治して最終的にはステロイド外用薬そのものが必要で無くなったという例も多くなっています。
また、良くなってから使用する外用薬はステロイド外用薬ではなくタクロリムス(プロトピック®)軟膏のようなステロイドを含まない外用薬でも同様の効果が期待できますので、希望に応じてそちらを用いることもあります。ただし、タクロリムスには紫外線に当たり過ぎない、使い始めに刺激感を感じるなどステロイド外用薬とは異なる注意点があります。
プロアクティブ療法は、アトピー性皮膚炎と同様に良くなったり悪化したりを繰り返す、手荒れ(進行性指掌角皮症)やフケ症(脂漏性皮膚炎)にも有効ですので、試みてもよいのではないかと思います。