2010年5月7日(金)開院予定 ケーズHAT神戸メディカルモール
原発性腋窩多汗症は、腋窩(わきの下)に大量の発汗を生じ、ひどいときには、頻繁な衣服の交換やシャワーが必要になったり、汗じみが気になるため衣服の選択が制限されたりなど日常生活に大きな支障をきたします。治療は塩化アルミニウムを含んだ水溶液やクリームの外用、あるいは薬局や化粧品店で制汗剤を含んだOTC医薬品や医薬部外品、化粧品を購入して使用するなどがあります。
多汗症の原因となる汗はエクリン汗腺から分泌されますが、発汗は交感神経により調節されています。最近開発された化合物であるソフピロニウム臭化物(エクロック®ゲル)、グリコピロニウムトシル酸塩水和物(ラピフォートⓇワイプ)はアセチルコリンという発汗を誘発する神経伝達物質を阻害することで交感神経による発汗を抑制します。
以前より発売されているエクロック®ゲルは流れ落ちにくいゲル状で、薬液を手で触れずに済むよう専用の塗布具(アプリケーター)が付属しており、朝一回の外用で夜まで効果が持続します。
ラピフォートⓇワイプは2022年5月に発売され、ウエットティッシュ状の1 回使い切りのワイプ製剤で、脇を拭くことで簡便かつ衛生的に薬を塗ることができます。
どちらの薬も効果は良好の印象ですが、症状が良くなってからもそのまま塗り続けていると、今度は効きすぎて脇の下がカサカサになってしまうことがあります。そういう時は一旦中止して、再び発汗が増えてきたら数日外用して良くなったらまた中止する、あるいは週に2~3回など間隔を開けて外用する、などで治療を続けるようにアドバイスしています。
注意点は、どちらの薬剤も薬液が眼やその周囲に付着すると散瞳(光を異常にまぶしく感じます)や眼圧上昇を起こす可能性があるので、薬液が付着した手などで顔を触らないことです。
外用以外の方法としては、プロパンテリン臭化物(プロ・バンサイン®)や漢方薬の内服、イオントフォレーシスという電気治療(当院には設置していません)、そして重症例については腋窩へのボツリヌス毒素注射やレーザー治療、胸部交感神経遮断術などの外科的治療が施術されます。ただし、外科的治療などでわきの下の発汗をほぼ止めてしまうと、施術後に代償性発汗というわきの下以外(顔、手足など)の発汗が増える現象が生じることがあります。当院では外用薬と内服薬にて加療していますが、ボツリヌス毒素注射やレーザー治療、胸部交感神経遮断術が施術可能な施設への紹介を行うこともできます。